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高森明勅
2023.1.16 09:00皇統問題

悠仁親王殿下のご即位を予定した皇位継承法は皇室危機に直結

目先だけの皇族数確保策で問題解決の
“先延ばし”を図る有識者会議報告書では、
「構造的な欠陥」を抱える皇室典範のルールに
基づく現在の皇位継承順位を、そのまま固定化しようとしている。

しかし繰り返すまでもなく、秋篠宮殿下は
天皇陛下より僅か5歳お若いだけ。

従って、秋篠宮殿下が実際に即位されることは
(あってはならない異常な事態を除けば)、
現実的には想定しにくい。

更に(「世襲」ならば当たり前であり、
憲法上の要請でもある「直系優先」の原則を前提とする限り)、
悠仁親王殿下のご即位を当然のこととして
予定する皇位継承法では、皇室の未来を閉ざしてしてしまう。

悠仁殿下が即位される場合、その根拠となるのは、
皇位継承資格がこれまで通り「男系男子」に
限定されるというルールだ。
このルールが頑固に維持されると、どうなるか。
答えは単純だ。

将来、皇室に悠仁殿下お1方だけが残ることになる。

いわゆる旧宮家プランは、既に何度も指摘してきたように、
憲法違反であり、もし憲法をねじ曲げてゴリ押しすれば、
皇室は“国民平等”の理念にひび割れを
起こさせる存在と見られかねない。
よって採用できない。

更に、内親王・女王方やそのお子様に
皇位継承資格を認めなければ、そのご結婚は
「皇位の世襲」に何ら関わらないので、
ご結婚後も皇族の身分を保持され、当事者の自由と権利を
制約し続ける、憲法上の根拠を持ち得ない。

だから、それらの方々はご結婚と共に皇族の身分を
離れられる制度としてこそ整合性を持ち得る
(現行制度がまさにそのようになっている)。

そうであれば、いずれ悠仁殿下お1方だけの
皇室になることは避けられない。

そうした将来が予めはっきりと見通せる状況では、
畏れ多いが悠仁殿下のご結婚のハードルは極めて高くなる。
しかも、そのご結婚相手が“お1方以上の健康な男子”を
生まなければ、皇室そのものを滅ぼす結果になる。
まさに想像を絶した重圧だろう。
この重圧は、悠仁殿下のご結婚を一層至難にせずにはおかない。

結局、悠仁殿下のご即位を予定する
「男系男子」限定という皇位継承のルールは、
悠仁殿下のご結婚を至難なものする。
万が一、「男系男子」限定というルールが
維持されたまま悠仁殿下がご独身を通されるような
事態に陥ると、皇室の未来は一体どうなるか。
少しでも想像力があればたやすく想像できるはずだ
(幸いご結婚に至っても、たった一組だけのご夫婦から
スタートする場合の、皇位継承可能性の「期待値」
の危うさは既に指摘した通り)。

悠仁殿下のご即位を自明視するルールは、
殿下ご自身のご生涯を苛酷なものとし、
それはそのまま皇室存続の危機に直結する。

【高森明勅公式サイト】
https://www.a-takamori.com/

高森明勅

昭和32年岡山県生まれ。神道学者、皇室研究者。國學院大學文学部卒。同大学院博士課程単位取得。拓殖大学客員教授、防衛省統合幕僚学校「歴史観・国家観」講座担当、などを歴任。
「皇室典範に関する有識者会議」においてヒアリングに応じる。
現在、日本文化総合研究所代表、神道宗教学会理事、國學院大學講師、靖国神社崇敬奉賛会顧問など。
ミス日本コンテストのファイナリスト達に日本の歴史や文化についてレクチャー。
主な著書。『天皇「生前退位」の真実』(幻冬舎新書)『天皇陛下からわたしたちへのおことば』(双葉社)『謎とき「日本」誕生』(ちくま新書)『はじめて読む「日本の神話」』『天皇と民の大嘗祭』(展転社)など。

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